こんにちは、歩き方コンサルタントの篠田洋江です。オンラインウォーキングスクールを運営しています。
週一回お送りしているまち歩きコラム、本日は前回に続き高円寺を深堀していきます。
【地域の守り神を歩いてめぐる~高円寺編2~】
「東京高円寺阿波おどり」は、商店街の振興以外にも氷川神社の祭礼の奉納の催しという意味がある。氷川神社というと、埼玉県大宮市にある武蔵一宮氷川神社、港区にある赤坂氷川神社など各地に存在するが、この高円寺にも氷川神社があるのだ。この高円寺氷川神社は
■全国で唯一の気象神社
高円寺氷川神社は駅の南口から徒歩1分、下り坂の手前にある。旧高円寺村原の鎮守で、社伝では文治5年足立盛長の創建だという。境内には日本唯一の気象神社があり、新海誠監督の映画「天気の子」に登場していることもあってか、映画の聖地巡礼といったことで気象神社に足を運ぶ人も多いようだ。
「天気の子」にもでてきた下駄型の絵馬は小ぶりでかわいらしく、子どもの頃に靴を飛ばして天気を予想した記憶がよみがえってくる。脱・雨女、結婚式に晴れますように等いろいろな絵馬があってなかなかおもしろい。
カラフルなてるてる坊主も愛らしい。
気象神社の歴史をひもとくと、今の杉並区立馬橋公園を一帯を含む高円寺北にあった旧陸軍気象部に昭和19年4月10日に造営・奉納されたのが始まりで、その後終戦に伴い旧気象部隊関係者から払い下げを受け、昭和23年9月10日に氷川神社に遷宮祭を執行し、移設されたそうだ。
中野・杉並に陸軍基地があったなど、知ろうとしなければ知れない歴史かもしれないが、杉並区立馬橋公園をはじめ道のところどころに陸軍敷地跡の石杭が埋まっているから、散歩のおりには下を向いて注意深く歩いてみると発見できるかもしれない。
■高円寺の高円寺
高円寺氷川神社からさらに2,3分程歩くと、宿鳳山高円寺(しゅくほうざんこうえんじ)に到着する。旧通称桃堂といい、開創は弘治元年。境内には開運子育地蔵堂がある。
実は高円寺という地名の発祥の地とされ、寺の入り口の案内板によれば「当寺が広くその名を知られるようになったのは、第五世耕岳益道の時、三代将軍徳川家光の知遇を得たことによります。(中略)また、それまで小沢村と呼ばれた村名を、寺名をとって高円寺村と改めさせたのも家光をいわれています。以来「高円寺」の名は駅名などにもなり、現在に至っています。(原文まま)」とのことで、家光ゆかりの寺のようだ。
駅からそれほど離れていないのに緑が多く心が落ち着く佇まい。何より山門から本堂までの美しいこと!本堂の手前には桜の木があり、季節によっては緑とピンクのコントラストがより美しさを際立たせてくれる。
■龍の鳥居
本堂向かって左にある稲荷神社の石の鳥居は必見だ。龍が掘られており、思わず声がでるほどのインパクトでただものではない雰囲気があるのからだ。後から調べたネット情報によると、龍の鳥居は登り龍・降り龍からなる双龍鳥居というものだそう。杉並区の馬橋稲荷神社と品川神社の三社にありあわせて「東京三大鳥居」というのだそう、誰がつけたんだろう、東京三大鳥居。
縁起が良さそうだし何かご利益がありそうという下心から頭や腹や背中をなでたら、同じ杉並区の馬橋稲荷神社に向かう。東京三大鳥居と聞いてしまったら、どうぞ近いんだし行こうかしら、なんていう気分になる。
■龍を求めて馬橋へ
馬橋稲荷神社は、高円寺駅と阿佐ヶ谷駅のちょうど間にある神社である。住宅街の中にあり、宿鳳山高円寺からは15分ほど。私のおすすめは桃園川緑道を通るルートだ。(桃園川緑道については別のブログで改めて語りたい)
馬橋稲荷神社の近隣は住宅街で静かで目印が少ないうえに神社が塀で囲まれているから、分かりにくいので行く人は注意。
さて、馬橋稲荷神社の正面にある双龍鳥居は、かなりひかないとカメラの画角に収まりきらないほど大きな鳥居だ。
この馬橋稲荷神社については、またどこかでとりあげたい。
■心のよりどころ、住み心地の指針
今回は紹介しなかったが、高円寺駅1分には長仙寺もあり、静かで夏など蝉の声をききながら立っているだけで浄化されそう庭が広がっている。境内の石仏は歯痛が治るといわれているそうだから、歯が痛くなったら歯医者にいくのにあわせて立ち寄ろう。
また、東京メトロ丸の内線の新高円寺や東高円寺近辺にも寺院が点在している。これら神社仏閣というのはその地の治安や住み心地を見るひとつの指標でもある。いつもきれいに保たれているということは管理する人がいる証拠だし、地域の目が行き届いている証拠でもあり、お祭りがあるなら地域にどんな人が住んでいるか雰囲気が分かるし顔が見える安心感がある。
当たり前のようにある神社仏閣を、パワースポットだとかご利益だといった視点ではなく、地域の守り神という視点で眺めれば、地域性やそこに住む人々のぬくもりやゆるやかな関係まで伝わってくるようだ。
めぐるだけで穏やかな気持ちになる地域の守り神は、おだやかで平穏無事な地域の生活の象徴なのかもしれない。
ふだん当たり前にある地域の守り神をめぐる散歩は、きっと心を穏やかにしてくるいい散歩だ。
(つづく)